グーグルに勝つ広告モデル
著者:岡本 一郎
1章 マスメディアの本質は「注目=アテンション」の卸売業
2章 アテンションのゼロサムゲームから脱却できるか?
3章 マスメディアの競合としてのインターネットメディア分析
4章 4マスメディアvsインターネット
5章 テレビvsインターネット
6章 オンデマンドポイントキャスト事業の提言
7章 ターゲットメディアとしてのラジオの確立
8章 情報のコモディティ商戦から新聞は抜け出せるか
9章 ネットの差別化に特化する雑誌
10章 合従連衝によってプレイヤーの数を減らす
11章 なぜ、それでもマスメディアは必要なのか
12章 コンテンツ論
13章 マーケターに求められるパラダイムシフト
▼ヤフーとグーグルの違い
テレビ、ラジオ、雑誌、新聞の4マスメディアのビジネスモデルの本質は、大衆の注目の卸売です。英語でいうアテンションを卸売している。
一方、近年騒がれている21世紀メディアとしてのグーグルが依拠する経済は、インタレスト(能動的な興味・関心)です。グーグルはアテンションではなく、インタレストの卸売をするビジネスモデルです。
消費者の態度変容プロセスの枠組みとして、よく使われる「AIDMA」は、アテンション→インタレスト→ディザイア→メモリー→アクションを略したものです。ここでインタレストはアテンションよりも一段階購買に近いステップにあります。通常はアテンションを持った人のうちの何割かしか、インタレストを持ちませんから、そこで相当数のターゲットがふるいから、こぼれてしまうわけです。
▼メディアに回せるアテンションの潜在量は一日平均5時間
マスメディアビジネスの本質がアテンションの卸売であるという事は、成長のカギはアテンションの取扱量ということになります。
一日約24時間のうち、メディアやエンターテイメントは5時間を奪い合うという構図になっているのです。
▼メディア/コンテンツビジネスは「過去」と競合するビジネス
この5時間に占めるマスメディアのシェアを上げられないか、という論点でしょう。
結論から言えば、この数値は増えるどころか急激に減る蓋然性が高いのです。その理由は過去のコンテンツにシェアをどんどん奪われるからです。テレビもふくめたメディア/コンテンツ産業が、他の産業と大きく異なる点の一つとして、「過去のストックが競合になる」という点が挙げられます。
▼テレビは見られないが、動画は見られている
まず、人口は増えない。そして人々がメディアに使える時間はには限りがある。そういう状況の中、膨大な過去の映像や音楽のストックに安価で容易にアクセスできるようになりつつある。この3つを統合的に考察すると、「人々がメディアに使える時間のうち、マスメディアに投下する比率が今後劇的に低下する」ことが予測されます。
▼アテンションのゼロサムゲームから脱却できるか?
アテンションの総量が増えない事がわかっているのに、アテンションを奪い合う競合の数は増えている。これはゲーム理論でいうゼロサムゲームです。プレイヤー全員の損得合計がゼロになるゲーム、誰かが得をすれば、誰かが損をするゲームです。
では、メディアは将来的に、生き残りをかけて流血の争いをするしかないのでしょうか?
実は、人類の歴史においては、ゼロサムゲームの不毛を非ゼロサム化する事で乗り越えた、という事例がいくつもあるのです。
ゼロサムゲームを脱却するポイントは「ゲームの単位を変える」と「サムの総量を増やす」の2つです。
▼競合分析としてのインターネットメディア分析
インターネットメディアの新しさについて、ここでの分析の焦点は、
1. 消費者のアテンションを獲得するパワー=仕入の戦い
2. 獲得したアテンションを販売するパワー=卸売の戦い
の2点です。
平たくいえば、既存のマスメディアが獲得していたアテンションのうち、インターネットはどの部分を奪うのでしょうか?結論からいえば、消費者にとってネットと代替性の高いアテンションから、順番にシフトしていく、ということになります。
インターネットとマスメディアの代替性は
1. 提供情報
2. 情報の消費シチュエーション
3. アクセススタイル
の3つのポイントを分析する事で、判断が可能ではないかと考えています。
▼本質的な理由
あえて加えれば、筆者自身はこの3つのポイントのさらに上位概念として、「そのメディアに接している本質的な理由は何か」ということも考えるべきだと思います。例えば、視聴者がテレビに接触している理由を調査してみると、「情報収集」とか「なんとなく」といった回答が多いのですが、もう少しその心理を掘り下げてみると「寂しさを紛らしたい、人とつながっていたい、人と話題を共有していたい」という欲求があります。となると、そもそも、情報とかシチュエーションとかアクセススタイルがどうこういう以前に、そういった気持ち、欲求が他のメディアで解決されてしまったら、ニーズはなくなってしまうわけです。その点も考察するべきでしょう。
▼卸売の戦い:ポジショニングマップから判断するネットメディアの新しさ
獲得したアテンションは、広告主に卸売されてはじめて収益につながります。逆にいえば、どんなにたくさんのアテンションを獲得できたとしても、広告主にそれを販売できなければいみがありません。
広告主にしてみれば、アテンションはあくまでもマーケティング上の目標を達成するためのツールです。そうなると販売する側=メディア側としては、自分たちのメディアをどうポジショニングすべきか、を判断する事が重要になります。一言でいえば、自分のメディアをどう差別化するかが重要になるわけです。
▼理想的・説得的メディアかた情緒的・感覚的メディアへ
マーケティングの側面から考えてみると、一般的に市場の立ち上がりの時期は、理性的・説得的な情報、つまり数値や物理的な特性をしっかりと訴求する事が求められるわけです。
これが成長期を経て成熟期、商品の特性上の違いはあまりなくなってきます。そこでは物理的な性能や数値よりも「情緒的な価値」が重要になってきます。つまり産業が成長し成熟化していく過程で、コミュニケーションのニーズはマップの下から上へ移動していく、ということです。
▼マーケターの思考パラダイムも変革を求められる
一般化してまとめると「セグメントされたターゲット層に対して、情緒的・感覚的なブランドコミュニケーションを行うことが可能なメディアが初めて登場した。」ということになるとおもいます。
これが、インターネットが単にメディアとして新しいだけでなく、戦略面での考え方を変えることを促しているとする第一の側面です。
▼テレビにどんどん近づくネット
「情報提供」「情報の消費シチュエーション」「アクセススタイル」の3つの観点から、「テレビの代替のされやすさ」を検討してみると、近い将来、ネットはきわめてテレビに近いプラットフォームになりうることが理解できます。
▼視聴者のニーズは高精細画像ではなく、タイムシフト&編成権
米国や日本では、様々な視聴ニーズにかんする調査が行われています。それらを総括してみると、視聴者の映像コンテンツに対するニーズは、
1. タイムシフト(好きなときに見たい)
2. 編成権(好きな部分だけ見たい)
の2つに収斂しています。
▼タイムシフト
コピーではなく時間をずらしただけという考え方ですが、その後のハードの世代交代を経て、ニーズとして市場に定着しました。
1. タイムシフトのニーズは潜在的に広く・強く存在
2. タイムシフトのツールとしては(今のところ)HDレコーダーが最適。
3. HDレコーダーを保有した人の過半数がCMをほとんど見ない。
米国ではHDレコーダーによるCMスキップが問題視されていますが、韓国ではテレビ局によるオンデマンドポイントキャストが5年前くらいから始まっているので、HDレコーダーが全く売れていません。タイムシフトのサービスをテレビ局が自ら提供しているので、必要ないわけです。
▼編成権により視聴者の「時間コスト」を削減する
これは一言でいうと、自分の好きな部分だけピックアップして見たい、ということです。
最近の大学生や高校生と話すと、ネットばかりでゼンゼンテレビをみていない、という子がいますが、話を聞いてみるとYouTubeは見ていたりする。つまり、必ずしも動画を見なくなっているわけではないのです。
コンテンツを選択するアプローチ、もっといえば情報処理のスタイルが違うわけで、この部分のギャップが埋められれば、彼らをテレビの前に連れ戻すことは十分可能だと考えるべきです。
▼そもそも広告が効かなくなる時代
社会科学の大御所ソロモン・アッシュが行った実験によると、人は、ある特定の選択をした周りの人の絶対数ではなく、その相対数、つまりシェアによって態度を決めていることがあきらかになっています。
アッシュの提唱した概念で、情報環境の変化がもたらすインパクトを考えてみましょう。
1. 従来は、商品に対して態度形成するための情報ソースとしてはマス広告、店頭における商品及び、販促物、店員の説明がほとんどで、特殊なケースを除いてすでに購入済みの知人による口コミやエキスパートによる評価は手に入らなかった。
2. マス広告の情報量には大きな変化はないが、広告とは「すでに購入した人」または「その道のエキスパート」の評価を簡単に手に入れられるようになってきた。
3. 購入の意思決定の為の総情報量に占めるマス広告のシェアは今後、減り続け、口コミまたはエキスパート評価の情報シェアが高まり続けそう。
4. シェアがある一定を超えるとマス広告は態度形成させる機能を失い、認知させるだけの機能が発揮し得なくなる。加えて、マス広告情報と自分で収集した情報にギャップがあると、企業やブランドに対する消費者の信用の低下という事情すら引き起こしかねない。
ここで非常にタチが悪いのは、広告の絶対量が変化していないという点です。広告の絶対量が変わらない、つまり、コストは変わらない。にも関わらず急激にその効果を失うわけですから、マーケティングの費用対効果が極端に低下する時代が到来しつつあるということなのです。
▼成功事例に見られる共通点
成功事例の共通点をまとめると、次のようになります。
1. インターネットを、情報をプッシュするための第5マスメディアと思わないこと。企業側の都合でいいたいことを一方的にいうのはむしろ危険。インタ―ネットを新たな価値ある情報を協創(企業と消費者が情報を一緒に生み出すこと)
2. ネット上では「潜在的なユーザーの不満」を顕在化させる「場」作りが大事。情報の協創はただ待っていても起きない。利用シーンや不満を想起させる刺激を与えるなどの「場」作りが重要。
3. 担当者の顔が見えるコミュニケーションが「場」作りのポイント。企業としての体裁を全面に出していては協創は生まれない。担当者の顔が見える事で、はじめて協創は可能になる。その為には責任委譲等のガバナンス面での改革も必要。
▼情報テクノクラートとしてのマーケターの終焉
マーケターはこれまで一種の情報テクノクラートとして振舞うことを許されてきました。どのような情報を消費者に渡し、どのような情報を消費者に渡さないかを判断し、権力を行使する。しかし、そういった時代はもう終わりつつあることをマーケターはしっかりと認識すべきです。企業はテクノクラートとしての機能を失いつつありますが、その一方で消費者と等身大の目線を獲得し、以前には気づくことのできなかった顧客のニーズや、自社商品の本当の価値を認識する窓を手に入れたともいえるのです。
WEB2.0をメディアアウトとして考えるか、あるいはまったく新しいパラダイムとして捉えるかによって、今後のマーケティングのパフォーマンスは大きく変わってくるでしょう。
1章 マスメディアの本質は「注目=アテンション」の卸売業
2章 アテンションのゼロサムゲームから脱却できるか?
3章 マスメディアの競合としてのインターネットメディア分析
4章 4マスメディアvsインターネット
5章 テレビvsインターネット
6章 オンデマンドポイントキャスト事業の提言
7章 ターゲットメディアとしてのラジオの確立
8章 情報のコモディティ商戦から新聞は抜け出せるか
9章 ネットの差別化に特化する雑誌
10章 合従連衝によってプレイヤーの数を減らす
11章 なぜ、それでもマスメディアは必要なのか
12章 コンテンツ論
13章 マーケターに求められるパラダイムシフト
▼ヤフーとグーグルの違い
テレビ、ラジオ、雑誌、新聞の4マスメディアのビジネスモデルの本質は、大衆の注目の卸売です。英語でいうアテンションを卸売している。
一方、近年騒がれている21世紀メディアとしてのグーグルが依拠する経済は、インタレスト(能動的な興味・関心)です。グーグルはアテンションではなく、インタレストの卸売をするビジネスモデルです。
消費者の態度変容プロセスの枠組みとして、よく使われる「AIDMA」は、アテンション→インタレスト→ディザイア→メモリー→アクションを略したものです。ここでインタレストはアテンションよりも一段階購買に近いステップにあります。通常はアテンションを持った人のうちの何割かしか、インタレストを持ちませんから、そこで相当数のターゲットがふるいから、こぼれてしまうわけです。
▼メディアに回せるアテンションの潜在量は一日平均5時間
マスメディアビジネスの本質がアテンションの卸売であるという事は、成長のカギはアテンションの取扱量ということになります。
一日約24時間のうち、メディアやエンターテイメントは5時間を奪い合うという構図になっているのです。
▼メディア/コンテンツビジネスは「過去」と競合するビジネス
この5時間に占めるマスメディアのシェアを上げられないか、という論点でしょう。
結論から言えば、この数値は増えるどころか急激に減る蓋然性が高いのです。その理由は過去のコンテンツにシェアをどんどん奪われるからです。テレビもふくめたメディア/コンテンツ産業が、他の産業と大きく異なる点の一つとして、「過去のストックが競合になる」という点が挙げられます。
▼テレビは見られないが、動画は見られている
まず、人口は増えない。そして人々がメディアに使える時間はには限りがある。そういう状況の中、膨大な過去の映像や音楽のストックに安価で容易にアクセスできるようになりつつある。この3つを統合的に考察すると、「人々がメディアに使える時間のうち、マスメディアに投下する比率が今後劇的に低下する」ことが予測されます。
▼アテンションのゼロサムゲームから脱却できるか?
アテンションの総量が増えない事がわかっているのに、アテンションを奪い合う競合の数は増えている。これはゲーム理論でいうゼロサムゲームです。プレイヤー全員の損得合計がゼロになるゲーム、誰かが得をすれば、誰かが損をするゲームです。
では、メディアは将来的に、生き残りをかけて流血の争いをするしかないのでしょうか?
実は、人類の歴史においては、ゼロサムゲームの不毛を非ゼロサム化する事で乗り越えた、という事例がいくつもあるのです。
ゼロサムゲームを脱却するポイントは「ゲームの単位を変える」と「サムの総量を増やす」の2つです。
▼競合分析としてのインターネットメディア分析
インターネットメディアの新しさについて、ここでの分析の焦点は、
1. 消費者のアテンションを獲得するパワー=仕入の戦い
2. 獲得したアテンションを販売するパワー=卸売の戦い
の2点です。
平たくいえば、既存のマスメディアが獲得していたアテンションのうち、インターネットはどの部分を奪うのでしょうか?結論からいえば、消費者にとってネットと代替性の高いアテンションから、順番にシフトしていく、ということになります。
インターネットとマスメディアの代替性は
1. 提供情報
2. 情報の消費シチュエーション
3. アクセススタイル
の3つのポイントを分析する事で、判断が可能ではないかと考えています。
▼本質的な理由
あえて加えれば、筆者自身はこの3つのポイントのさらに上位概念として、「そのメディアに接している本質的な理由は何か」ということも考えるべきだと思います。例えば、視聴者がテレビに接触している理由を調査してみると、「情報収集」とか「なんとなく」といった回答が多いのですが、もう少しその心理を掘り下げてみると「寂しさを紛らしたい、人とつながっていたい、人と話題を共有していたい」という欲求があります。となると、そもそも、情報とかシチュエーションとかアクセススタイルがどうこういう以前に、そういった気持ち、欲求が他のメディアで解決されてしまったら、ニーズはなくなってしまうわけです。その点も考察するべきでしょう。
▼卸売の戦い:ポジショニングマップから判断するネットメディアの新しさ
獲得したアテンションは、広告主に卸売されてはじめて収益につながります。逆にいえば、どんなにたくさんのアテンションを獲得できたとしても、広告主にそれを販売できなければいみがありません。
広告主にしてみれば、アテンションはあくまでもマーケティング上の目標を達成するためのツールです。そうなると販売する側=メディア側としては、自分たちのメディアをどうポジショニングすべきか、を判断する事が重要になります。一言でいえば、自分のメディアをどう差別化するかが重要になるわけです。
▼理想的・説得的メディアかた情緒的・感覚的メディアへ
マーケティングの側面から考えてみると、一般的に市場の立ち上がりの時期は、理性的・説得的な情報、つまり数値や物理的な特性をしっかりと訴求する事が求められるわけです。
これが成長期を経て成熟期、商品の特性上の違いはあまりなくなってきます。そこでは物理的な性能や数値よりも「情緒的な価値」が重要になってきます。つまり産業が成長し成熟化していく過程で、コミュニケーションのニーズはマップの下から上へ移動していく、ということです。
▼マーケターの思考パラダイムも変革を求められる
一般化してまとめると「セグメントされたターゲット層に対して、情緒的・感覚的なブランドコミュニケーションを行うことが可能なメディアが初めて登場した。」ということになるとおもいます。
これが、インターネットが単にメディアとして新しいだけでなく、戦略面での考え方を変えることを促しているとする第一の側面です。
▼テレビにどんどん近づくネット
「情報提供」「情報の消費シチュエーション」「アクセススタイル」の3つの観点から、「テレビの代替のされやすさ」を検討してみると、近い将来、ネットはきわめてテレビに近いプラットフォームになりうることが理解できます。
▼視聴者のニーズは高精細画像ではなく、タイムシフト&編成権
米国や日本では、様々な視聴ニーズにかんする調査が行われています。それらを総括してみると、視聴者の映像コンテンツに対するニーズは、
1. タイムシフト(好きなときに見たい)
2. 編成権(好きな部分だけ見たい)
の2つに収斂しています。
▼タイムシフト
コピーではなく時間をずらしただけという考え方ですが、その後のハードの世代交代を経て、ニーズとして市場に定着しました。
1. タイムシフトのニーズは潜在的に広く・強く存在
2. タイムシフトのツールとしては(今のところ)HDレコーダーが最適。
3. HDレコーダーを保有した人の過半数がCMをほとんど見ない。
米国ではHDレコーダーによるCMスキップが問題視されていますが、韓国ではテレビ局によるオンデマンドポイントキャストが5年前くらいから始まっているので、HDレコーダーが全く売れていません。タイムシフトのサービスをテレビ局が自ら提供しているので、必要ないわけです。
▼編成権により視聴者の「時間コスト」を削減する
これは一言でいうと、自分の好きな部分だけピックアップして見たい、ということです。
最近の大学生や高校生と話すと、ネットばかりでゼンゼンテレビをみていない、という子がいますが、話を聞いてみるとYouTubeは見ていたりする。つまり、必ずしも動画を見なくなっているわけではないのです。
コンテンツを選択するアプローチ、もっといえば情報処理のスタイルが違うわけで、この部分のギャップが埋められれば、彼らをテレビの前に連れ戻すことは十分可能だと考えるべきです。
▼そもそも広告が効かなくなる時代
社会科学の大御所ソロモン・アッシュが行った実験によると、人は、ある特定の選択をした周りの人の絶対数ではなく、その相対数、つまりシェアによって態度を決めていることがあきらかになっています。
アッシュの提唱した概念で、情報環境の変化がもたらすインパクトを考えてみましょう。
1. 従来は、商品に対して態度形成するための情報ソースとしてはマス広告、店頭における商品及び、販促物、店員の説明がほとんどで、特殊なケースを除いてすでに購入済みの知人による口コミやエキスパートによる評価は手に入らなかった。
2. マス広告の情報量には大きな変化はないが、広告とは「すでに購入した人」または「その道のエキスパート」の評価を簡単に手に入れられるようになってきた。
3. 購入の意思決定の為の総情報量に占めるマス広告のシェアは今後、減り続け、口コミまたはエキスパート評価の情報シェアが高まり続けそう。
4. シェアがある一定を超えるとマス広告は態度形成させる機能を失い、認知させるだけの機能が発揮し得なくなる。加えて、マス広告情報と自分で収集した情報にギャップがあると、企業やブランドに対する消費者の信用の低下という事情すら引き起こしかねない。
ここで非常にタチが悪いのは、広告の絶対量が変化していないという点です。広告の絶対量が変わらない、つまり、コストは変わらない。にも関わらず急激にその効果を失うわけですから、マーケティングの費用対効果が極端に低下する時代が到来しつつあるということなのです。
▼成功事例に見られる共通点
成功事例の共通点をまとめると、次のようになります。
1. インターネットを、情報をプッシュするための第5マスメディアと思わないこと。企業側の都合でいいたいことを一方的にいうのはむしろ危険。インタ―ネットを新たな価値ある情報を協創(企業と消費者が情報を一緒に生み出すこと)
2. ネット上では「潜在的なユーザーの不満」を顕在化させる「場」作りが大事。情報の協創はただ待っていても起きない。利用シーンや不満を想起させる刺激を与えるなどの「場」作りが重要。
3. 担当者の顔が見えるコミュニケーションが「場」作りのポイント。企業としての体裁を全面に出していては協創は生まれない。担当者の顔が見える事で、はじめて協創は可能になる。その為には責任委譲等のガバナンス面での改革も必要。
▼情報テクノクラートとしてのマーケターの終焉
マーケターはこれまで一種の情報テクノクラートとして振舞うことを許されてきました。どのような情報を消費者に渡し、どのような情報を消費者に渡さないかを判断し、権力を行使する。しかし、そういった時代はもう終わりつつあることをマーケターはしっかりと認識すべきです。企業はテクノクラートとしての機能を失いつつありますが、その一方で消費者と等身大の目線を獲得し、以前には気づくことのできなかった顧客のニーズや、自社商品の本当の価値を認識する窓を手に入れたともいえるのです。
WEB2.0をメディアアウトとして考えるか、あるいはまったく新しいパラダイムとして捉えるかによって、今後のマーケティングのパフォーマンスは大きく変わってくるでしょう。
![]() | グーグルに勝つ広告モデル (光文社新書 349) (2008/05/16) 岡本一郎 商品詳細を見る |




